失われたはずの時間が季節風に揺られて
釣り糸のように煌いている
ぐいぐいと引き寄せられてゆく
この危うさ
思い出の淵が
あなたの不幸に
私を引き摺り込もうとしている
手を離せばいいのだわ
この不幸の釣り竿を
ただ はなせばいいだけなのよ
あなたは淵の底で釣り糸を手繰り寄せながら
きっと叫んでいるんだわ
はなせ はなすんだ
けれども
あなたは自分の糸は決してはなさない
安全ベルトのように幾重にも体に巻きつけて
釣り糸を手繰り寄せながら
あの頃のように白々しく
そして 哀れっぽく
叫んでいるんだわ
はなせ はなすんだ
私があなたを救い上げるか
私が地獄の淵におちるまで
あなたはそうやって いつまでも
呪文のように叫び続けるんだわ
私の手がはなれないように
はなせ はなすんだ
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行 天 佳 代(ぎょうてんかよ) の 詩 [メ ニ ュ ー] |
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