見慣れない女が

妙に親しそうに近寄ってきて

俺がさしている 黒い傘の下にもぐりこんで

可笑しそうに笑っている

不愉快だが このどしゃ降りでは

追い出すのは酷だ

仕方がない 仕方がない

すると

女は手品師のように指の隙間から

赤い傘を出して 俺の傘の下にさした

赤い傘の下には 黄色い茸のような傘が二本生まれて

その下に 球根のような子供が

青い長靴をぴちゃぴちゃいわせはじめた

これは女の手品なのか

それとも

俺の傘のなせる技なのか

ともかく 雨はまだ降り続いている

 

 

 

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